入社理由は映像に関わる仕事に興味があったから。入社以来、映像事業部一筋20年のベテラン。「これまで部内のさまざまな仕事に一通り関わってくることができました。映画を観るなら109シネマズを選んでもらえるように多様なジャンルの作品を上映することを常日頃から心がけてます」。休日は小学生の娘を連れて映画館へ。家族との触れあいも兼ねつつ、映画を鑑賞しているお客様がどのくらいの年代、どのような反応をしているのかをリサーチしている。
東急レクリエーションが運営するシネコン「109シネマズ」は、全国に19館を展開しています。映画興行部では、どの劇場に、どの映画を、どのタイミングで、どれくらいの期間上映するかを決めています。スクリーンごとに座席数が異なるのがシネコンの特徴。週末の各作品の動員を見極めて上映スクリーンや上映回数を配給会社と交渉しながら調整し、これから上映する映画の選定や終了した映画の精算業務など、同時進行でいくつもの仕事をこなさなければならない仕事です。
私の担当は都内、神奈川、関西の9館。ヒットしそうな映画を編成しておけば劇場にお客さまが入る…、というような単純な仕事ではありません。ロケーションや商業施設の特徴で客層は大きく異なるため、最大限に集客できるようにそれぞれの劇場の特性に合った最適な作品を編成するよう努めてます。
どの作品に対しても、一人でも多くのお客さまに観てもらえるよう宣伝に努め、公開初日を迎えます。編成の仕事に就いて10年以上になりますが、ひたすらそれを繰り返しています。どこまでやり尽くせばゴールに辿り着けるのかわからない際限のない仕事ですが、だからこそ時間が経つのも忘れてしまうくらい無我夢中になれる仕事でもあります。
配給会社と共に宣伝プランを練り、プロモーションに深く携わるケースもあります。私の好きな人物を扱ったある伝記映画で、宣伝構築に携われたことは楽しい想い出となっています。作品がヒットし、109シネマズのシェアが高くなれば、配給会社の方にも喜んでいただけるし、いい仕事をしたという気持ちになります。とは言え、作品の選定に自分の好みを前面に押し出すようなことはしません。客観的な目線で作品と向き合い、どのくらいのお客様に受け入れられるかどうかを意識して一つ一つの作品を編成していきます。
いま日本国内では、年間1,000本以上の映画が上映されています。その中からヒットする作品を見極めるのはとても難しい。とくに幼児向けやティーン向けなど、自分の感性に頼れないジャンルの映画を選定するときは苦労しています。配給会社の宣伝の仕方、それに対する市場の反応、過去の類似作のデータ、そしてもちろん試写。あらゆる手段を駆使して「これはいけるんじゃないか」と思って上映したのに、お客さまが入らないことも…。
私は仕事で年間約100本の映画を観ていますが、たとえ何千本の映画を観ても、ヒット作をピタリと当てることはできないでしょう。長年の歴史でたくさんのヒット作を生み出している世界の名だたる映画会社ですら、すべての作品がヒットするわけではありませんから。確実に成功する方程式がないからこそ、そこに様々なドラマが生まれ、今なおたくさんの人々が情熱をもって関わり続けられることができるおもしろい仕事だと思っています。
近年、コンサートや演劇などのライブビューイングなど、映画以外の様々なコンテンツを上映してほしいというお話をいただきます。こちらとしてはニッチなジャンルだと思っていたコンテンツが、ふたを開ければ満席になって大盛況となり、驚くこともしばしばあります。このように、普段は映画館に行かない人々がそれらのコンテンツを上映することで、映画館に足を運んでいただけることは、私たちにとっては大きなチャンスです。今後も映画だけに留まらず、映画館を通じて様々なエンタテインメントの体験を提供できるように積極的に新しいチャレンジをしていかなければいけないでしょう。
日本人は忙しすぎると言われています。多忙な生活の中で、貴重な時間をどのようにしたら映画館に費やして頂けるかどうか知恵を絞り、期待以上のものを体験して映画館を後にしていただけるような映画館づくりをこれからもしていきたいですね。
※所属は取材当時のものです。